子どものやる気を引き出す! 親のアプローチ
☆わかりやすいコミュニケーションをとるために!☆
◇コミュニケーションを取ることの大切さは、いたるところで言われていますが、実は、コミュニケーションを取ってもなかなか理解できないこともあるものです。相手の言っていることを簡単に理解することは、実は相当大変なことなのです。
◇今回は、コミュニケーションについてアメリカの心理学者が、面白い実験をしたので紹介したいと思います。
◇こんな実験です。二人一組になって、一方が手で机を叩いて相手に曲名を知らせるというものです。
◇心理学者の予想は、かなりの人が、曲名を当てるだろうということでしたが、予想は大きく外れたそうです。相手に対してただ手で机を叩くだけでは、曲名は、伝わらなかったのです。
◇私は、この実験を保護者の講演会で試したことがあります。まずシンプルな曲の「さくら」をやってみました。1・2名の方を除いてほとんどの参加者は、全く曲名すら思いつかなかったようです。
◇続いて、スマップの「夜空ノムコウ」を手で叩いてみましたが、誰もわかりませんでした。全く曲名が出てこなかったのです。どんな音楽か、誰も全く分からなかったようです。そこで、今のはスマップの曲ですとヒントを与えたところ、数名の方が、すかさず答えを言ってくれました。
◇この実験で分かることは、わかりやすいコミュニケーションをするためには、理解を助ける枠組みや文脈が大切だということです。
◇親が心の中で思っていることは、子どもには、全く分からないのかもしれません。だから今から話すことの枠組みや文脈を子どもに示すことです。話の枠組みや文脈を親と子どもが共有してこそ、わかりやすいコミュニケーションが図れるのです。そのことをこの実験は教えてくれているのだと思います。
◇ヒントをもらうことで、相手の頭の中に音楽が流れ出すからこそ、手を叩くだけで曲のように聞こえてくるのです。もし、そういうヒントが与えられなければ、音楽という文脈が頭の中に流れないので、手で机を叩く音と音が結びつかず、曲が予想できないのです。
◇子どもと話す時は、話を聞く子どもの前提を考えてみましょう。スムーズなコミュニケーションを取るために、今から話をする枠組みを子どもと共有することです。
『話の枠組みを子どもと共有しましょう!』
☆モチベーションのボタン!☆
◇モチベーションのボタンは、人それぞれです。親と子どもでもそのボ
タンは違います。親のモチベーションのボタンをそのまま子どもに押し
付けても、子どもには、全然響かないものです。子どもには子どものモ
チベーションのボタンがあるものなのです。
◇NLP(神経言語プログラム)という考え方に、「価値観型」の人間
と、「ビジョン型」の人間に分ける考えがあります。価値観型の人間は、日々の生き方が問題になっているので、その生き方に関わることにモチベーションのボタンがあるそうです。
◇ビジョン型の人間は、将来の自分のイメージに関わることにモチベー
ションのボタンがあります。この二つ人間観を少し意識して子どもを見
ていると、どっちの傾向が強いか分かってきたりします。
◇今回は、価値観型の人間に対する接し方の例を示します。
お母さん:A君、最近どうなの?何だか悩んでいるように見えるけど。
A君 :え~?別に。
お母さん:そう?何か変だけど。今日はどういう一日だった?
A君 :え~?別に。普通だよ。
お母さん:A君は、どういう時に今日は良い一日だったと感じるのよ。
A君 :え~・・・。わかんないよ。何でそんなこと聞くの。
お母さん:お母さんがA君を見ていると、A君が、自分を大切にしているな!と感じる時があるのよ。その時のA君の顔が好きなんだけどな。最近、どうもA君に元気がないように見えるのよ。
A君 :そんなことないよ。
お母さん:A君は、何を一番大切にしたいと思っているの?
A君 :え~?・・・・。
お母さん:A君が、自分の大切にしていることをコツコツと積み重ねていくだけでお母さんは良いと思うわ。最近、A君は、無理して嫌なことやってんじゃないの?
A君 :そんなことないよ。強いて言えば、勉強が嫌だけどね。
◇A君にとって大切なことを、お母さんが知ろうとすることが大切なこ
とです。価値観型の人間は、なかなか自分が納得しなければ動かないも
のです。無理強いをしても無駄なことが多いので、そういう価値観型の
子どもには、共感を持って接してみてください。そうすれば、子どもは、お母さんの理解を得て、やる気になるものです。
『人それぞれのモチベーションをボタンを発見する!』
☆1年の目標を立てる!☆
◇さて、今回のテーマは、目標を決めるです。目標をお子さんと話し合いながら紙に書いて、誓いを立ててみてください。
お母さん:A君、1年間の目標を決めようよ。
A君 :やだよ。めんどくさいよ!
お母さん:お母さんは、目標を決めたわ。ほら、こうやって「今年の誓い」を作ったわ。
A君 :お母さん凄いねえ!でも僕はいいよ。
お母さん:そう言わずに。A君の今年の目標は何よ。目標って言っても、別に学校の成績をどのくらい取るとか、そういうことでなくてもいいのよ。やりたいことや去年できなくて、悔しい思いをしたこと、今年は、そんな思いをしたくないということを挙げてみてよ。今年、何を一番やり たい。そして何を達成したい。もし、それがやれたり、達成したら、A君は今年の12月にどうなっていると思う。
A君 :えー?全然思い浮かばないよ!
◇今年の目標を色々質問しながら以下の項目について明確にしていきましょう。その時に、必ず紙に書いて記録に残しておくことが大切です。
1.何をしたいのか。その理由は何か。
・何をするのか。
・なぜするのか。
・いつするのか。
・どうやってするのか。
2.何を達成したいのか。その理由は何か。
・何を達成したいのか。
・なぜ達成したいのか。
・どうやって達成するのか。
・いつまでに達成するのか。
3.目標が達成されたら、自分はどうなっているのかを具体的に書く。
◇以上の項目を話し合いながら書くことで、色々と目標が具体的で明確になっていくはずです。そうしたら最後にその紙をコピーして目立つところに貼っておくことです。本人の部屋とみんなが見ることができるところに。ぜひ、1年の目標を立ててください。きっと子どもの成長が見えてくるはずです。
『1年の目標を立てる!』
☆子どものやる気をくじく言葉☆
◇保護者面談などで、いろいろなお母さんが話してくれた親子の会話を思い起こすと、日常会話の中で、随分と子どもたちは、お母さんに手厳しく注意を受けていることが分かります。たとえば、こんな会話です。
A君 :これどうするんだっけ?
お母さん:何度も同じことを言わせないでよ!こうするんでしょ!
お母さん:宿題やったの?何で言われなきゃ出来ないのよ!
A君 :えっ?!忘れてただけだよ。
お母さん:いつになったらあなたは、自分で何でも出来るようになるのよ!
お母さん:テーブルのものを何で片付けないのよ!捨てちゃうわよ!
お母さん:今度こんな失敗したらお母さん、許さないからね!
◇こういう言葉は、子どもたちの小さなプライド(自尊感情:セルフ・エステーム)をくじいています。ついつい出てしまった、お母さんの感情的な表現が、子どもたちの存在や価値観を傷つけているのです。
◇お母さんに考えてほしいのは、子どもたちを動かすものは、お母さんやお父さんや周りの人の愛情なのだ。その端的な表現が、言葉なのだ。そのことを忘れないようにして欲しいのです。
日常的に子どもに発する言葉で、多い表現は何でしょうか。ぜひ、リストアップしてみてください。そして、それらの言葉が、子どものやる気を引き出すために、有効なものなのかどうかを、一度、考えて欲しいのです。
恐怖政治よりは、民主政治を子どもは望んでいるはずです。自主的で勇気があって、自律的な子どもを育てるために、どういう促しの言葉が大切なのかを、考えてみましょう。自分の表現リストに、子どものやる気を引き出す言葉を加えていきましょう。